在中将,在五中将と呼ばれた右近衛権中将(うこんのえいごんのちゅうじょう)在原業平(ありわらなりひら)を表わした面です。
幾分つり気味の目としっかりした鼻をもつ端正な顔立ちは,紀貫之(きのつらゆき)に「近き世にその名きこえたる人」と称えられ,後世六歌仙の一人に数えられた業平の教養と優雅さを感じさせるとともに,線が細く上歯に鉄漿が施され下の歯がない口元は,女性化した平安貴族の特徴を表しています。
眉間の深い縦皺や特徴的な殿上眉などに,恵まれた才能故に妬まれ,終生五位の中将の位に甘んじた業平の悲哀が漂います。
負け修羅の面と呼ばれることもあるようです。
使用われる演目は
「小塩(おしお)」「清経(きよつね)」「忠度(ただのり)」「通盛(みちもり)」「雲林院(うんりんいん)」
そのほか「絃上(けんじょう)」「融(とおる)」「須磨源氏(すまげんじ)」など