能・能面に特別な興味を持たない人が「能面」と聞いて漠然と思い浮かべるのが「小面」ではないでしょうか。
無表情の代名詞として使われる「能面のような……」という言い回しも,小面を念頭においたものと思われますが,本当に無表情かどうかは実際に舞台を見ていただくのがよろしいでしょう。
「小面」の「小」はちいさいという意味よりも,可憐とか可愛いとか初々しいという意味あいが強く,女面のなかでは最も若い女性を表します。
15~16歳という説が主流ですが,12~15歳の説もあります。
女面に共通の特徴として,高い位置に眉を書き,歯を鉄漿付けに仕上げるあたりに室町時代の風習を伝えます。
小面独特の特徴としては,毛描きを乱れなく真っ直ぐに描きます。
小面のなかでも特に著名な面として,豊臣秀吉が石川竜右衛門重政に打たせたとされる「雪」「月」「花」の三面があります。
「雪」は火災で失われたとの記録もあるようですが,金春家経由で現在は金剛家が所蔵。
「月」は江戸城とともに炎上したとも,大阪城とともに焼け落ちたともいわれますが行方知れず。
「花」は金剛家から現在は三井家が所蔵しています。
「小面」は金春流と喜多流ではシテの面として使いますが,観世流ではツレが使用します。
使われる演目は
「井筒」「野宮」「熊野」「松風」「東北」「舟弁慶」「右近」「采女」「浮舟」「江口」「大原御幸」「杜若」「源氏供養」「胡蝶」「誓願寺」「草紙洗」「玉葛」「巴」「半蔀」「花筐」「二人静」等
※(演出により使用されない場合もあります)